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『ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷』
ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫)
塩野 七生

ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) (新潮文庫)
ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) (新潮文庫) ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫) ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) (新潮文庫) ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫) ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫)
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グラックス兄弟の改革、マリウス、スラ、ポンペイウスが活躍した時代まで(BC133頃~BC63頃)。

ポエニ戦争を経て、ローマはイタリア半島にとどまらない大国となり、また、貧富の差も拡大していった。
これにより従来の政治制度がうまく機能しなくなったため、グラックス兄弟が改革を試みる。
なお、グラックス兄弟は、スキピオの孫にあたる、名門中の名門である。

彼らの改革は基本的には農地所有に関するもの。
貴族が保有できる農地に上限を設け、無産者に農地を与えることで、失業者対策とし、同時に社会不安をなくし、中堅市民を増やす、というもの。

しかし元老院は、国政を動かすのは自分たちだと思っている。
兄弟は、元老院との対立の中で死に、改革は頓挫する。

兄弟の次に登場するのが、マリウスとスラ。
マリウスは軍事で名をなし、執政官になる。
マリウスが行ったのは軍制改革。
今までは徴兵制であったのを志願制に変える。
失業者を軍に吸収したのである。
また、マリウスはゲルマン人の侵攻も食い止めている。
のちにローマ帝国はゲルマン人の大移動によって滅亡することになるが、すでにこの頃にはしばしばゲルマン人の侵攻があったのである。
紀元後に突如として現れたわけではなかった。
ゲルマン人への防衛線を確立しようとしたのはカエサルだが、これは追って述べる。

ローマには、農地の問題のほかに市民権の問題があった。
イタリア半島における同盟市は市民権を持っていない。
ポエニ戦争中はローマを守るために、ハンニバルの攻勢に耐え続けた同盟市だったが、その後も市民権がなく本国ローマとの不平等に業を煮やし、一斉に蜂起。
同盟市戦争が勃発する。
ローマはマリウスやスラたちが指揮を執り、対抗。
結果としてはローマ市民権を与えることで解決を図った。
これにより、イタリア半島は本国ローマと同盟市により成り立つのではなく、ローマを首都とする国家となる。

同盟市戦争の後、マリウスとスラの対立が鮮明になる。
年齢差は約20歳で、マリウスの方が年長である。
双方ともに武力をもってローマを制圧し、反対派を粛正する。
ちなみに、カエサルはスラによる粛清を辛くも免れている。
このとき消されていたらローマの歴史、どころか世界の歴史は変わっていただろう。

話が前後するが、マリウスは、スラがオリエント征伐に行っている間がローマを手中にしたが、老齢のため死ぬ。
スラはオリエント征伐が優先だと考えローマにはすぐには戻らず、オリエント征伐を終えたのち、ローマに戻り、マリウスの残党を破り権力を握る。
そのうえで、元老院を中心とした改革を行ったうえで隠棲し、寿命を迎える。

スラ派の人材としては、ルクルス、クラッスス、ポンペイウスらがいる。
後二者は、のちにカエサルとともに第1回三頭政治を行う。
ルクルスとポンペイウスは名高き軍人、クラッススは経済界の大物といったところ。
これらの他にも登場人物がいるが、彼らが、内部的な権力闘争もありスラの作った体制を崩していく。
スラ派の人物たちの中ではポンペイウスは若手だったが、その類稀なる将才が他の追随を許さず、人気を得、のし上がっていく。
先輩格にあたるルクルスにも引導を渡し、権力を握っていく。

ルクルスは、支持を得られなかった理由として、こう述べられている。
ルクルスは、自らの才能の優秀さに自信をもっていた。・・・優秀な自分が耐えているのだから、兵士も同じく耐えるべきと考えていたのである。・・・優秀なルクルスには、自分にまかせておけば良い結果につながるという自信が強すぎたために、兵士たちを積極的な参加者に変えるに必要な、心の通い合いの大切さに気づかなかったのであった。
ルクルスは東方に派遣されていたが、彼に代わったポンペイウスが、セレウコス朝シリアを滅ぼし、小アジアを勢力圏に置いた。

こうして、ローマで圧倒的な力を持つにいたったポンペイウスだが、彼は体制を変えることはせず、それはカエサルが行うこととなる。

最後に言葉を紹介する。
「歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はこの後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。これらの偉大な個人においては、普遍と特殊、留まるものと動くものとが、一人の人格に集約されている。彼らは、国家や宗教や文化や社会危機を、体現する存在なのである。・・・危機にあっては、既成のものと新しいものとが交ざり合って一つになり、偉大な個人のうちにおいて頂点に達する。これら偉人たちの存在は、世界史の謎である。」
---世界史についての諸考察(ヤコブ・ブルクハルト)

ついにカエサルが登場する。
次巻。
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