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『ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ』
ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)
塩野 七生

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中) (新潮文庫) ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下) (新潮文庫) ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫) ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫) ローマ人の物語〈12〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(中) (新潮文庫)
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アウグストゥスの統治の始まり(BC29)からその死(AD14)まで。

アクティウムの海戦でアントニウスとクレオパトラを破り、オクタヴィアヌスはローマ唯一の権力者となる。
第二回三頭政治の残る一人レピドゥスはオクタヴィアヌスとの政争に負け、隠棲したらしい。

アウグストゥスと呼ばれることになるのでここからはこれで通す。
アウグストゥスが権力者となったとき、彼はまだ34歳であった。
彼はカエサルの暗殺を見ており、自身の余生は長いことから、帝政への移行を焦らなかった。
自身はローマの第一人者であるとして、元老院とともに、共和政のもとローマを統治していく・・・ふりをした。
彼は、政策への拒否権、身体の不可侵等の護民官特権を持ち、軍の総司令官でもあり、、、といった具合に、個々の権利自体は合法的に、しかしすべて総合すると名実ともに絶対的な権力者となっていった。
それを長い統治期間をかけて、ローマ市民・元老院たちに慣れさせていった。

権力を固めていきながら彼が行ったのは、カエサルの改革・暗殺、内戦を経て混乱した統治体制・属州の整備である。
カエサルはほとんどすべてを一人で行っていた感がするが、アウグストゥスにはアグリッパとマエケナスという同年代の協力者がいた。
軍事・公共事業の面ではアグリッパが、外交・文化・広報の面ではマエケナスが、それぞれアウグストゥスを補佐した。
なお、現代の“メセナ”の語源がマエケナスである。

アウグストゥスの政策の一つに少子化対策があったことは興味深い。
安定したローマにおいて、ローマ市民は独身生活に困ることがなかったという。
そこでアウグストゥスは、独身者と既婚者の間に差を設け、独身であると、社会的・経済的に不利になる法案を通した。
現代であればこのような法案は大バッシングを受け廃案になりそうなものだ。
塩野先生曰く、「神の前に誓った関係を解消するなど論外というキリスト教に対して、禁じはしないが決行した場合の不利益は甘受しなければならないというローマ人の考え方は興味深い」
なお、キリスト教がヨーロッパで広まるのはもっと後のことである。
ローマもギリシアも多神教であり、ユダヤ教やキリスト教のような一神教ではない。
日本も八百万の神という言葉があるように一神教のような思想は持っておらず、元来、古代ローマの方が親和性が強いだろう。

ローマの兵士は志願制に変わったが、質は落ちていない。
それは国家の要職を目指すには軍務経験が必須だったからである。
現代では文民統治が当然のようになっているが、古代ローマにおいては、国を率いる者は、物理的に外敵から国を守る必要もあり、必然的に軍事に携わらざるを得なかった。
「戦争=悪」という単純な考え方では理解できないだろう。
また、有能な指揮官でなければ軍に損害が生じる。
損害とはすなわち兵の死である。
無能な人間に率いられる組織は無用な犠牲を強いられる。
これは軍でなく、政治組織でも同様であろう。
組織の運営能力は、軍事・内政問わず、重要な能力である。



アウグストゥスは、共和政の振りをしながら帝政を固めていくという常人にはできないことをやってのけた。
相当な忍耐の持ち主だったと思われる。
帝国の平和は不断の努力からしか成り立たない。
想像もつかないほど気疲れしそうだが彼は長寿であった。
アグリッパやマエケナス亡き後も独りで黙々と統治を続けていた。
カエサルは、後継者としてアウグストゥスを指名したが、アウグストゥスは血にこだわったようである。
自分の後継者は自分の血を引くか一門から、と考えていたようである。
しかし、これは彼の努力だけではいかんともしがたく、年齢・能力共に十分なのは妻の連れ子のティベリウスであった。
ティベリウス自身、アウグストゥスの望みを知りつつ、血にこだわっていては後継者がおらず、自分がやるしかないということは分かっていたかもしれない。
AD14、77歳のアウグストスが死に、ティベリウスが跡を継ぐ。
次巻。



メモ。

平衡感覚とは、互いに矛盾する両極にあることの、中間点に腰をすえることではないと思う。両極の間の行き来をくり返しつつ、しばしば一方の極に接近する場合もありつつ、問題の解決により適した一点を探し求めるという、永遠の移動行為ではなかろうか。
自由と秩序は、互いに矛盾する概念である。自由を尊重しすぎると秩序が破壊され、秩序を守ることに専念しすぎると、自由が失われる。だが、この二つは両立していないと困るのだ。自由がないところに進歩はなく、秩序が守られていないと、進歩どころか今日の命さえ危うくなるからだ。
(文庫版15巻31、32ページ)
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