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『ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利』
ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉 (新潮文庫)
塩野 七生

ローマ人の物語〈38〉キリストの勝利〈上〉 (新潮文庫)
ローマ人の物語〈39〉キリストの勝利〈中〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈40〉キリストの勝利〈下〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈41〉ローマ世界の終焉〈上〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈37〉最後の努力〈下〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈42〉ローマ世界の終焉〈中〉 (新潮文庫)
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コンスタンティウス(337-361)からテオドシウス(379-395)まで。

コンスタンティヌスの死後、ローマは息子3人が継いだ。
その中でコンスタンティウスのみが生き残る。
コンスタンティウスは、血縁者を副帝にするが自ら殺し、しかし蛮族・ペルシアと戦ううえでやはり副帝が必要となり、一人残っていたユリアヌスを副帝にした。
蛮族の侵入が激しくなっているのに内戦を繰り返し、将官クラスも、兵も死ぬ。
結局はローマの防衛力の毀損である。

ユリアヌスは西方を任される。
副帝になるまでは飼い殺しされていたが、任命された後、まじめに責務を果たし、西方の軍団の支持を得るまでになる。
そして軍団から正帝に推挙され内戦が生じるかに思われたが、コンスタンティウスが没したため、内戦は避けられ、ユリアヌスがそのまま正帝となった。
ユリアヌスは背教者と言われるが、これは後に権力をもったキリスト教からの呼び方である。
ユリアヌスは。多神教のローマに戻そうとしただけだった。

正帝になって数年後、ユリアヌスはペルシアとの戦いの中で死ぬ。
ユリアヌスの後の皇帝はキリスト教徒であった。

この時期、蛮族にも動きがあった。
フン族の登場である。
ライン川、ドナウ川をはさんで対峙していたのは中世の主役となるフランク、アングロ、サクソン、ゴートなどであったが、その向こうからフン族が押し寄せてきたのである。
ゲルマン民族にせよ、フン族にせよ、物資が少ないため、豊かなローマに押し寄せ、押し出されてくるのである。
5世紀に突如として現れローマを滅ぼしたのではなく、過去からずっと彼らは存在し、ローマはこれを食い止めようとしていた。
それがままならなくなり、ついに滅んでいくのである。

フン族の登場に伴い、ゴート族がドナウ川流域に侵入し居ついてしまう。
その頃東方はテオドシウスが担当している。
西方はグラティアヌスが担当していたが司令官の反乱で死亡して、幼いグランティニアヌス2世が西方を担当するが、実質的にはテオドシウスがローマ全域を見ることになる。
テオドシウスはすでに洗礼を受け、キリスト教徒になっていた。
テオドシウスがキリスト教以外を全面的に禁止したことによって、キリスト教がローマの国教となる。
一神教のキリスト教は、他の宗教、他の神を認めないため、多神教であった時代のローマの遺産を破壊していくことになる。
これが見直されるのはルネサンス期だが、人類の財産がどれほど失われたことだろうか。

アンブロシウスという当代随一の実務家がおり、彼がキリスト教会の仕組みを作り上げていく。
一神教ゆえに神以外崇めてはいけないが、人間は誰かにすがりたいという気持ちがある。
そこでアンブロシウスは守護神ではなく守護聖人を大量に生み出すこととした。
宗教といえど、一応の理屈の通る仕組みが作られることが重要で、それが満たされれば機能する。
世俗と隔絶したものではないということで、アンブロシウスはその点非常に有能な男だった。

こうしてローマが完全に異質なものに変化していくなか、テオドシウスは、二人の息子にローマを東西に分けて残して死ぬ。
次巻。



メモ。

改革がむずかしいのは、既得権層はそれをやられては損になることがすぐにわかるので激しく反対するが、改革で利益を得るはずの非既得権層も、何分新しいこととて何がどうトクするのかがわからず、今のところは支持しないで様子を見るか、支持したとしても生ぬるい支持しか与えないからである。だから、まるで眼つぶしでもあるかのように、早々に改革を、しかも次々と打ち出すのは、何よりもまず既得権層の反対を押さえこむためなのだ。
(文庫版39巻58、59ページ)

権力とは、他社をも自分の考えに沿って動かすのことのできる力であって、多くの人間が共生する社会では、アナルキア(無秩序)に陥ちたくなければ不可欠な要素である。ゆえに問題は、良く行使されたか、それとも悪く行使されたか、でしかない。
(文庫版39巻59ページ)

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